グローバル人材育成
グローバル経営の幹部育成
海外現地法人の総合力が向上すると日本企業のグローバル展開はより力強いものになります。下図のグローバル・グループへの5段階は、グループ本社と現地法人との関係をモデル化したものです。グループ本社は、一つひとつの現地法人の機能を高めていき、レベル3[共鳴段階]を超えて、レベル4[共存段階]、レベル5[共栄段階]に達するグループ会社をつくる努力を継続する必要があります。海外展開の歴史が長く、既にレベル4,レベル5に達している海外現地法人群を擁している会社も少なくありません。

海外展開を成長の柱に据える日本企業にとって、海外現地法人のレベルアップの努力と並行して、グループ本社と海外現地法人との共創を拡大してグループ総合力を高めていくこと大事になっています。この共創を強力に推し進めるために重要な役割を担うのが海外現地法人の人材群です。海外現地法人のナショナルスタッフの多彩な力を発見し、それを最大限活用することでグループ競争力は格段に高まるはずです。
グローバルタレントマネジメント:成功の条件は人材への飽くなき情熱
グローバル・グループへの5段階
そのような認識に立ち、現在、タレントマネジメントは、ブームの様相を呈しています。グローバルタレントマネジメントを成功させるために一番必要なのは、わがグループの人材への飽くなき関心と情熱です。全グループを挙げて情熱をもって取り組み、日本法人と海外現地法人の隅々まで人材の発掘に努め、有力人材を育成ルートにのせて、適時に重要ポストに登用する。そのために経営トップが先頭に立つ。これが何より大切なことです。

HCP(ヒューマンキャピタルプランニング)運用の将来像
グローバルタレントマネジメントにリストアップされた人材群を下図のHCP(ヒューマンキャピタルプランニング)のポジショニングマップ*に位置づけることを想定してみましょう。グローバル経営にとっての重要ポストがGRADEⅠ、GRADEⅡ。その重要ポストに就任する要件が整っている度合が、Ready&Available、Strech、Future の順で示されています。
日本企業のグループ経営の将来像として、これら6つのどのBOXにも、必ず、以下のカテゴリーの候補者がリストアップされている状態を実現する運用が望ましいと考えます。

●日本人候補者
●女性候補者
●海外の現地法人出身の候補者
●年齢が30代、40代の候補者
30代、40代の候補者を4つ目のカテゴリーにした理由は、海外の優秀な人材群の入社、活躍環境を整えるためです。重要ポストが優秀な若手層、壮年層に対して開かれていて、そこに挑戦の機会があることを、実際の運用で示していくことで、日本企業を選んでキャリアを築こうとする人材の厚みを増すことにつながるはずです。
現研は、今やるべきグローバルタレントマネジメントのあり方を日本企業の皆様と共に深く考えてその推進に協力します。そしてグローバル人材育成を通じてその基礎条件を形成する活動をサポートします。
*HCP(ヒューマンキャピタルプランニング)のポジショニングマップは、2009年に現研メンバーが米国3M社を訪ねた際に開示を受けたものを活用。3M社の場合、「米国人の候補者」「女性の候補者」「エスニックマイノリティの候補者」「米国生まれ以外の候補者」の4つのカテゴリーの候補者がどのボックスにも必ずいることを要件としていた。
グローバル人材育成
現研はグローバル人材育成を通じてグローバルタレントマネジメントの基礎条件を形成する活動をサポートします。
現研は以下の3系統のグローバル人材育成を行っています。
◆日本人を対象にした幹部・リーダー研修
◆海外駐在候補者、駐在予定者を対象とした研修
◆グループのグローバル幹部・リーダー研修:日本の本社と日本の拠点のスタッフ、海外拠点の日本人、そして海外拠点のナショナルスタッフで構成されて実施されるグローバル研修
◆日本人を対象にした幹部・リーダー研修
幹部・リーダー研修のカリキュラムの中にグローバル展開、現地法人経営に必要な戦略力、構想力、リスク感知力、財務的アプローチ、葛藤のマネジメント、価値観への洞察等を織り込んで研修を行います。日本人幹部・リーダー層にしっかりとグローバル思考と行動意識を定着させるためには1泊2日×5回~10回が必要になります。
◆海外駐在候補者、予定者を対象とした研修
日本人の海外駐在候補者、予定者を対象にした研修は、海外での事業活動や現地法人におけるマネジメントに必要な要素を凝縮してコンパクトに展開します。コロナ禍を契機にオンライン研修が定常化した今、海外に既に赴任している駐在員の方が参加する機会も増えています。
通常の幹部・リーダー研修は10名~15名編成で行われますが、海外駐在候補者向けの研修の場合、各社とも同じタイミングそれだけの人数が揃わないため自社仕様の社内研修を行うのではなく、現研の公開研修「経営考え方教室 海外駐在候補者・赴任者研修」に海外駐在の候補者、予定者を派遣頂いております。
現研 経営考え方教室 海外駐在候補者研修の概要はこちら
◆グループのグローバル幹部・リーダー研修
グローバル・グループの研修として、海外拠点のナショナルスタッフ、海外拠点の日本人スタッフ、グローバル本社を含む日本拠点の日本人スタッフのメンバーが一堂に会して研修を実施します。この研修はグローバル経営にとって非常に大きな意味を持ちます。

これまで日本拠点の中で仕事をしてきた日本人スタッフのグローバルマインドを覚醒させると共に、海外拠点のナショナルスタッフのグループ経営への参画意識を高めてロイヤルティを育みます。
長期間にわたり、切磋琢磨し合い、また協力し合い、力を合わせて高い壁を乗り越えた経験を重ねて、グループ社員の間に共通意識基盤が生まれ、グループの共通価値観と共通言語を共有します。さらには、踏み込んで頼り合える人間関係が構築されて、相互の議論の創造性が向上します。
海外現地法人のナショナルスタッフにとってはグローバル幹部・リーダー研修に参加することは明確なキャリアデベロップメントであると共に、グループ内での新たに大きくキャリアビジョンを描く契機にもなります。
このように強化された事業基盤(=強固な相互信頼)のもとで議論が活発化して拠点を超えたスケールのプロジェクトテーマが誕生し、グループのグローバル経営を前進させていきます。
文化、歴史、価値観への関心と敬意の醸成へ
「日本人を対象にした幹部・リーダー研修」「海外駐在候補者、駐在予定者を対象とした研修」「グループのグローバル幹部・リーダー研修」のいずれのカリキュラムでも重視しているのが、文化、歴史、価値観への関心と洞察力を高めるプログラムです。これらは地球人としての大切な素養であると考えます。
現研は1960年代から今日まで、多くの幹部・リーダー研修において、歌舞伎、能、狂言、文楽、落語、バレエ、オペラなどの伝統芸能、古典芸能の本を読み、実際に観劇をすることを研修メンバーへの課題としてきました。




そして海外の宗教の研究、価値観衝突から生まれた国際紛争の歴史とその構造の把握なども研修の定番の課題です。また、グループが拠点をもつ国々の歴史、文化、生活様式を研究し、相互に議論します。海外拠点のナショナルスタッフに「武士道」「代表的日本人」「茶の本」等、英語で書かれた日本人による日本論を課題図書に指定し、そこから得られた洞察や自分の意見を発表する機会をつくり、日本という国への一歩踏み込んだ理解の土壌を拡げています。
このようなプログラムを積み重ねることにより自国の文化のアイデンティティを自覚し、また異なる文化への積極的関心を高めて、私たちとは異なる価値体系をもつ社会やその社会に住む人々に内在する価値と論理を掴み、それらに敬意をもって接する姿勢を身につけて頂くことを願っています。