“Unlimited” ビジネスモデルの勝者とは

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現研主任研究員 篠崎太郎

◆アメリカ発ビジネスモデル-月額90ドルでコーヒー飲み放題 CUPS

制限時間内に特定の飲食メニューが「食べ放題」、「飲み放題」となる「〜放題」サービス。私はこの「〜放題」というフレーズが大好きで、飲食店を中心によく利用している。このサービス、英語だと「Unlimited」と表現するようだ。このような「Unlimitedメニュー」を 「月額定額」で提供するウェブ・サービスがある。

アメリカのCUPSは、提携している300店舗以上の独立系カフェにおいて、月90ドルでコーヒーが飲み放題になるサービスを提供している。(※一部対象外あり。全メニューが飲み放題となる月額120ドルコースもある。)1度利用すると、30分間は間隔をあけないと次の利用が出来ないルールはあるが、1日あたり約3ドルでコーヒーが飲み放題になるというのは、コーヒー好きには非常に魅力的なサービスではないだろうか。現時点で日本ではこのようなサービスはない(単店舗での取り組みはあり)ようだが、1日に4〜5杯はコーヒーを飲む私にとってはぜひ利用したいサービスである。

◆ユーザー、カフェ、CUPS-それぞれの立場から考えると

このビジネスモデルについて、「ユーザー」、「カフェ」、そして「CUPS」それぞれの立場から考えてみたい。

「ユーザー」がCUPSを通じてそれぞれのカフェにおいて注文する「店頭通常価格✕利用数量」の合計が1ヶ月で90ドルを超えていれば、ユーザーにとってはCUPSを利用する価値がある。またCUPSを通じてお気に入りのカフェを新たに見つけることができるかもしれない。一方で90ドルを下回るようであれば、CUPSを利用せずに個別に各カフェを利用するほうが、料金としてはお得だ。

「カフェ」はCUPSを通じてユーザーにコーヒーを提供する際、通常店頭価格に対して決められた歩率をシステム利用料としてCUPS側に支払う契約となっているようだ。たとえば50%で契約しているとすると、CUPSを利用するユーザーに対して、常に通常料金の半額でコーヒーを提供することになってしまう。一方でCUPSの集客力により客数が増え、またコーヒー以外にもフードメニューなどの注文がされれば売上増にも貢献してくれる。CUPSを通じてユーザーが自店を気に入ってくれれば、店独自の顧客となる可能性もある。自店を利用するユーザーデータをCUPSを通じて取得できるというメリットもある。

「CUPS」はユーザーから課金を行い、システム利用料を差し引いた額を各カフェに支払う。ユーザーの利用量が少なかったり、CUPSにとって有利な条件でカフェ側と契約が出来れば、CUPSの収益は上がる。一方で、このシステム利用料、すなわち「通常店頭価格に対する歩率✕利用数量」が、ユーザーがCUPSに対して支払う利用料金の合計を越えてしまった場合、CUPSは赤字となってしまう。

このビジネスモデルの勝者は誰か。ユーザーは月額料金を超えた量を利用すれば、その分得をする。カフェの売上もユーザーの利用量に比例して上がるが、利益率は下がる。ユーザー数が増えればCUPSの売上も上昇するが、利用量が多すぎると赤字となるリスクがある。長く利用されるサービスとなるためには、「ユーザー」、「カフェ」、「CUPS」の3者共にメリットのあるビジネスモデルであることが必要だ。

◆「通い放題」メニューには暗雲

アメリカの事例をもう1つ。ClassPassという、フィットネスクラブやヨガ教室などをユーザーとマッチングするウェブ・サービスがある。CUPSのビジネスモデルのように、月額固定料金(例:ニューヨーク 200ドル/月)で各エリア(州)内の提携スタジオに通い放題となるサービスを提供していたが、昨年11月に「通い放題」のメニューを中止し、「月額固定料金で、決められた回数を利用可能」という方式に料金体系を変更した。
「ユーザー」の利用回数が想定よりも多すぎたのか、またはClassPassと各フィットネスクラブとの契約内容に無理があったのかはわからないが、“通い放題”では「ユーザー」、「フィットネスクラブ」、「ClassPass」の3者全員が共にメリットのある、バランスのとれたビジネスモデルを実現することは出来なかったのではないだろうか。
日本においても、ClassPassのように「月額9800円で、全国2500のフィットネススタジオに通い放題」というサービスが話題となり注目していたが、残念ながら開始から2年で終了となるようだ。

◆登場人物全員が勝者になって欲しい

ビジネスモデル設計を行う際には、登場人物全員にメリットのある、バランスのとれたビジネスモデルを構築する重要性を強く感じた事例である。

「食べ放題」、「飲み放題」といった「Unlimited」サービスはとても魅力的だが、私たちの胃袋は残念ながら「limited」、限界がある。日頃の暴飲暴食の影響か、昨年末に自己最高体重を更新してしまい体重計の上で青ざめたが、それでもまた足を運んでしまう魅力が「Unlimited」にあるのは(個人的には)間違いない。そのような人を惹きつけ、なおかつビジネスモデルとして成立する「Unlimited」サービス創造に私はぜひ貢献したいのである。